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2024.11.30

伝統的製法で作られた桜色の塩辛をバルで楽しむ「小田島水産」

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伝統的製法で作られた桜色の塩辛をバルで楽しむ「小田島水産」

函館漁港に停泊するイカ釣り漁船。

函館漁港に停泊するイカ釣り漁船。

函館山の麓、東南端にある函館漁港。函館湾とその周辺は古くから天然の良い漁場として知られていました。1900(明治33)年6月、港湾工学の父と呼ばれる広井勇氏によって函館漁港の改良工事が終了すると、漁業基地そして物流基地として重要な役割を果たしてきました。

港に停泊している独特の形をしたライトを下げた多数の船は、全てイカを釣るための漁船。津軽海峡の夜の海に煌めく光、いわゆる漁火(いさりび)は、イカ漁の最盛期を迎える夏〜晩秋の函館を彩る風物詩となっています。イカ釣り漁船の中には函館漁港から出港する船も多くあることから、ここ一帯はイカと共にある地域でした。

函館市民なら誰もが知る「いか踊り」の歌詞にも「いかさし、塩辛、イカソーメン」と名前が挙がるほど、馴染みの深い“塩辛”。函館漁港程近くの入舟町にある「小田島水産」は、長くイカと共に歩み続けた企業の一つで、伝統的な製法で作られる古き良き塩辛の美味しさを、現代に伝え続けています。

発酵食品「塩辛」の美味しさの秘訣

小田島さんの左横にあるのは、創業当時の「小田島水産」の看板。

小田島さんの左横にあるのは、創業当時の「小田島水産」の看板。

4代目である営業部長の小田島章喜(おだじま・あきよし)さんに、工場を案内していただきながら、塩辛の製造工程を伺いました。

カポッ!カポッ!とテンポ良く空気を含ませながら撹拌する。

カポッ!カポッ!とテンポ良く空気を含ませながら撹拌する。

塩辛は、イカのミミ・胴体・ゲソをマキリと呼ばれる刃物でカットして木樽に入れ、ゴロ(イカの内臓)、塩、調味料とともに攪拌しながら1週間ほど寝かせ、じっくりと発酵させて作られます。

この時に用いる木樽の素材は秋田杉。現在は職人がいないことから新しく生産されることは少なく、今あるものを手入れしながら大切に使い続けているのだそう。

「長年使い続けてきた樽には、イカを発酵させるための菌が住み着いています。塩辛は発酵食品ですから、樽とともに菌も育ち、当店ならではの桜色でまろやかな塩辛が出来上がるのです。」「道具や建屋に菌が棲みつき、味の要となることは発酵の分野ではよくあり、日本酒を造る蔵の『蔵付き』なんかもそうです。この発酵のための樽は我々にとって財産ですね。」と、小田島さんは並ぶ樽を眺めながら教えてくれました。

塩辛に対する発想の転換が1つの契機に

塩辛アヒージョの素を使って作られたアヒージョ。

塩辛アヒージョの素を使って作られたアヒージョ。

丹精込めて作られた塩辛ですが、「『お酒のアテ』『おじさんが食べていそう』『クセが強い』というイメージがあるのではないか?」と、小田島さんは考えていたそう。そこで「もっと多くの方に、カジュアルに塩辛を楽しんでもらいたい。」という思いから、一つの商品が誕生しました。

「小田島水産」の塩辛は、イカをじっくり発酵させているからこそ旨みたっぷりで臭みが少なく、まろやかで食べやすいと評判だったことから「アンチョビに似た使い方ができるのではないか?」と着目。そうして生まれたアンチョビの代わりに塩辛を使ったアヒージョの素「塩辛アヒージョ」を発売したところ、好評を得ることができたといいます。塩辛の持つ旨みはエビやホタテといった海鮮系の具材との相性も良いだけでなく、具材とスパイスの香りがより一層の味わいを引き立ててくれます。

バルから塩辛のポテンシャルを情報発信

塩辛バルの飲食スペース。

塩辛バルの飲食スペース。

さらに、直売所で実施していた試食でのお客様からの「お酒が飲みたいなあ。」「ご飯と一緒に食べてみたい!」という声から発想を得て、2022年に工場横の直売所に飲食スペース「塩辛バル」を開設しました。明治期に建てられた雰囲気のある外観や、工場で使われていた木樽を活用したカウンターを設けるなど、「小田島水産」の歴史を感じることもできます。

丹精込めて作られた塩辛の食べ比べや、小田島さんの提案するパエリアやパスタといった新しい塩辛の食べ方を体験できるとあり、観光客のみならず地元の方も多く訪れています。

13種類の塩辛と、松前漬や珍味を楽しめる食べ比べセット。

13種類の塩辛と、松前漬や珍味を楽しめる食べ比べセット。

特に、人気の塩辛食べ比べセットは、「小田島水産」で製造する塩辛と珍味のほぼ全てを味見することができ、過去には3枚を平げたお子様もいらっしゃったとか。「お酒のアテとしてはもちろん、朝やお昼の時間帯では食事として白米と一緒に召し上がる方も多いですね。」と小田島さんは話します。

看板商品「木樽仕込み」は棘のないまろやかさと旨みが際立つ味わいで、美しい桜色をしています。ふんわりと柔らかい口当たりですが、臭みはなく、イカの弾力や歯ごたえを感じるため、とても食べやすいのが特徴です。

そのほか、軟骨を加えて食感にアクセントを加えたもの、3年間発酵させたかんずりを加えたもの、塩分濃度を20%まで高めて発酵菌の力を最大限に引き出して旨みをより強めたものなど、多種多様な塩辛を楽しむことができます。

バル店内に掲示されている、かつての塩辛作りの様子を伝える写真。

バル店内に掲示されている、かつての塩辛作りの様子を伝える写真。

「小田島水産」は積極的に地元小学生などの見学を受け入れ、函館の産業を古くから支えてきたイカや塩辛について伝えています。3代目で社長の小田島隆(おだじま・たかし)さんは「見学の後に『生まれて初めて食べた塩辛が、ここの塩辛で良かったと思いました。』と手紙に書いてくださるお子さんもいらっしゃるんです。今の時代、若い方はなかなか塩辛を手にしないかもしれませんが、実際に体験した方からこんな言葉をいただくことほど嬉しいものはないですね。」と、お話してくれました。

そんな「小田島水産」の塩辛は、函館の魚であるイカと、そこから作られる塩辛の伝統的な製法を今世に伝えていることを理由に、2023年に小学校の補助教材内に取り上げられました。「変わらぬ製品作りと、その伝統的な作り方を伝えていくことも、我々の使命かもしれません」と、隆さんは語ります。

変わらぬ味を守り続ける一方、バルを通じて多くのファンを獲得している「小田島水産」。お店に足を踏み入れれば、地元の方々との交流と共に、これまでとは違った塩辛の新しい魅力に気付けることでしょう。


小田島水産/塩辛バル

住所:北海道函館市弁天町20-7

電話:0138-22-4312

アクセス:函館市電「どっく前」徒歩5

HPhttps://odajimasuisan-hakodate.com/

SNShttps://www.instagram.com/odajimasuisan/

*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください