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2025.07.20
京料理の一品や精進料理の貴重なたんぱく源として、古くから京都の食文化を支えてきた伝統食材「京麸(きょうふ)」。その歴史は、室町時代に中国での修行を終えた僧侶が日本に持ち帰ったことから始まります。
当時は宮中や寺院などで、限られた人しか口にできない貴重なものでしたが、江戸時代になると、懐石料理や茶会などで町衆にも食されるようになりました。
そんな京都の食文化を現代に受け継ぐのは、江戸時代前期にあたる1689(元禄2)年の創業以来、京麸と湯葉の専門店として330年以上にわたり暖簾を守り続けてきた「半兵衛麸(はんべえふ)」です。
五条大橋のたもとにある本店では、伝統的な麸料理から現代の食卓に合わせた新しい麸の楽しみ方まで、奥深い京麸の世界に触れることができます。
京都をイメージした中庭で結ばれた、町家や石造りの洋館
「半兵衛麸」には、初代から受け継がれる「不易流行(ふえきりゅうこう)」という家訓があります。「不易」とは変わらないもの、「流行」とは移り変わるもの。伝統を守りながらも、時代に合わせて常に新しい挑戦を続ける精神が深く根付いているのです。
「一代一代は、それぞれが電車の車両のようなもの。前の代のやり方をただ引き継ぐのではなく、そこに新しい価値をプラスしていくことが大切なんです。」と、取締役の玉置淳(たまおき じゅん)さんは語ります。
七福神の1人である「布袋尊(ほていそん)」が祀られている町家の台所
その言葉通り、2022年から2023年にかけて本店をリニューアルし、茶房やカフェ、ギャラリーなどが庭を囲む複合施設へと生まれ変わった「半兵衛麸」。明治時代に建てられた京町家の伝統的な木造建築の趣はそのままに、訪れる人が京都の歴史や文化を感じられる空間づくりを大切にしています。
施設内の通路には、120年以上前の井戸や“おくどさん”と呼ばれる釜戸が今もその姿を残しており、まるでタイムスリップしたかのような非日常的な感覚を味わうことができます。
京麸と湯葉を使ったコース料理「むし養い」
カフェやギャラリーなどさまざまな見どころがある複合施設の中でも、和とレトロモダンな雰囲気が同居する茶房では、麸と湯葉を使ったコース料理「むし養い」を楽しむことができます。「むし養い」とは「お腹の虫を養う程度の軽い食事」を意味する京ことば。“料亭で食されるイメージが強かった麸を家庭でも気軽に楽しんでほしい”という想いから、35年ほど前に提供を始めたといいます。
「やき麸と生ゆばの煮いたん」
コース料理の1つ「やき麸と生ゆばの煮いたん」は、やき麸が出汁をたっぷりと吸い込み、口に入れた瞬間にじゅわっと旨みが広がります。“煮いたん”とは、京都をはじめとする関西の言葉で“炊いたもの”という意味。出汁で具材をじっくりと煮含める料理を指します。
やき麸のしっかりとした弾力ともちっとした食感の秘訣は、その製法にあるのだそう。「半兵衛麸」のやき麸は膨張剤を使用せず、あえて膨らまないようにきめ細かく焼き上げています。そうすることで、調理しても煮崩れしない独特の食感を生み出しているのです。
「なま麸と生ゆばのみぞれ椀」
麸作りには大量の水が不可欠であり、特になま麸作りにおいては水質が香りや舌触りを大きく左右します。
「半兵衛麸」で使用している地下深くから汲み上げた井戸水は、清水寺の音羽(おとわ)の滝と水脈を同じくする軟水。この良質な軟水を使用することで、つるっとした優しい口当たりと繊細な味わいを実現させているそうです。
そうして作られたなま麸のもちもち食感を楽しむことができる「なま麸と生ゆばのみぞれ椀」は、あっさりしつつも食べ応えのある一品です。
庭を眺めながら食事ができる茶房カウンター席の様子
メニューは一部季節ごとに変更がありますが、いずれも家庭で簡単に作れるように考案されており、食事をしながら調理方法を教えてもらうことができます。
「なま麸は味噌や油との相性もよく、焼いてもよし、揚げてもよし、お鍋の具としても使うことができます。豆腐やお餅の代わりに使うことで、きっと料理のバリエーションを広げていただけるはずです。」と語る玉置さんの言葉には、“気軽に麸料理を楽しんでほしい”という熱い想いが込められています。
新商品の「スープdeお麩」
1階のショップでは、定番のやき麸やなま麸はもちろん、現代の食卓に合わせた取り入れやすい商品も多く並びます。
スープにそのまま入れるだけで手軽に麸が楽しめる「スープdeお麸」は、バジル、パンプキン、ブラックペッパーの3種類。時間のない朝やもう一品ほしい時にも活躍してくれそうです。
ご飯のお供にもぴったりな「お麸のしぐれ煮」
また、「むし養い」のメニューにもある「お麸のしぐれ煮」は、少し硬めの麸を使うことでまるでお肉のような食感に仕上がっており、味付けもご飯のお供にぴったりです。
こうした商品開発は、麸の魅力を現代の暮らしに届けたいという「半兵衛麸」の想いの表れ。伝統を重んじながらも、常に新しい麸の形を模索し続けています。
「半兵衛麸」の伝統と挑戦を受け継ぐ、取締役の玉置淳さん
伝統的な空間の中で京都の歴史や文化に触れるもよし、茶房でゆっくりと「むし養い」を味わうもよし。そして、新しい麸の可能性が詰まった品々を、旅の思い出とともに持ち帰るのもまた一興です。
「古きよきものを伝えていきながら、若い方や海外の方にも受け入れてもらえるような、時代に合わせた商品作りにも力を入れていきたいです。」と話す玉置さん。
麸という食材を通して京都の食文化を未来へつなぐ「半兵衛麸」の挑戦はこれからも続いていきます。
半兵衛麸
電話:075-525-0008
住所:京都府京都市東山区問屋町通五条下る上人町433
アクセス:京阪電鉄「清水五条駅」2番出口よりすぐ
HP:https://www.hanbey.co.jp/
SNS:https://www.instagram.com/hanbey1689/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。